公開日: |最終更新日時:
自治体は、住民の個人情報や公共サービスのインフラを扱うため、サイバー攻撃を受ければ市民生活に大きな影響が及びます。近年はクラウド活用や外部委託が増え、同時に攻撃手口も巧妙化しています。以前なら企業が主な標的だった攻撃が、自治体にも容赦なく向けられるようになりました。住民サービスの停止や、重要データの消失が起これば行政への信頼は失墜します。したがって、自治体が積極的にサイバーセキュリティ強化へ舵を切ることは不可欠と言えます。
自治体が保管する個人情報は、住民票や税情報、医療や福祉に関するデータなど多岐にわたります。これらの情報は外部に流出すれば深刻なプライバシー侵害や詐欺につながりかねません。 また、公共サービスが滞ると、ごく当たり前の社会活動が止まり混乱を招きます。市民の生活を守り、安心して暮らせる地域を維持するためにも、サイバー攻撃対策は自治体の責務と言えるでしょう。
総務省の情報通信白書によれば、日本国内で観測されるサイバー攻撃関連の通信総数は引き続き高水準にあります。2022年の観測結果では、1つのIPアドレスに対し十数秒ごとに攻撃が行われている計算です。 自治体を狙う攻撃件数の正確な統計は公表されていませんが、全国的に「不正アクセス禁止法違反事件」の検挙件数も増加しており、自治体であっても攻撃リスクが高まっていることがうかがえます。
参照元:総務省公式サイト(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/nd24a210.html)
ランサムウェアはデータを暗号化し、身代金を要求する代表的手法です。標的型攻撃は自治体の業務担当者を直接狙い、メールや添付ファイルを開いてしまうことで内部ネットワークへ侵入します。 さらに、無防備なサーバーへの不正アクセスも後を絶ちません。こういった攻撃は高頻度で発生しており、セキュリティホールが修正されていない古いシステムほど狙われやすい傾向があります。
自治体業務の多くは外部事業者へ委託されるため、委託先でのセキュリティ対策不足が自治体へ飛び火するケースが増えています。脆弱なサーバーの放置やデータ削除の不徹底など、人手不足や知識不足も背景にあります。ひとたび攻撃に成功すれば、自治体が預けた多量の個人情報が一挙に流出する危険性があるため、委託先のセキュリティ管理を強化する必要が指摘されています。
2024年の秋頃から、ロシア系とみられるグループが国内の自治体や交通機関のWebサイトへDDoS攻撃を仕掛ける事例が報じられています。一時的にサイトが閲覧困難となり、業務が数時間ストップするなどのトラブルが相次ぎました。 攻撃者は政治的な主張を兼ねており、短期間でターゲットを次々と変えるため、防御側は常に気を張り続ける必要があります。
サイバー攻撃が高度化する要因の一つに、攻撃ツールや方法がネット上で容易に入手できる現状があります。熟練したハッカーだけでなく、半ばアマチュアのグループでも攻撃を実行可能になりました。 自治体は豊富な人材や予算を持たないところが多いため、巧妙な攻撃への対応が遅れがちです。今後は、早急に人的リソースの育成と防御体制の確立を進めなければ、より甚大な被害に見舞われる危険性があります。
総務省は2025年度から、モデル自治体を対象に外部から疑似攻撃を実施する「ペネトレーションテスト」を進める方針を打ち出しました。人口が多く影響が大きい都道府県や政令指定都市などを優先的に選び、テスト結果と改善策を全国的に共有するとしています。これは自治体のネットワークやシステムに潜む脆弱性を早期発見し、実効性のある対処法を確立するねらいがあります。
テスト結果や監査の内容を公表し、どの自治体がどの程度セキュリティ対策を行っているのかを明確にする動きもあります。これにより、住民や議会が防御の現状を把握しやすくなり、 さらなる予算措置や担当者の増員を後押しできると期待されています。
システム運用だけでなく、定期的な脆弱性診断や監査を行い、問題点を迅速に修正する流れが主流となりつつあります。特に自治体内部で専門知識を持つ人材が不足している場合、外部のセキュリティ企業やコンサルを活用して早い段階で問題を洗い出す重要性が高まっています。
印刷業務を担うイセトーが2024年5月にランサムウェアに感染し、同年7月には多くの自治体に被害の公表や影響範囲の報告が行われました。納税情報やワクチン接種関連データなどが流出した可能性が浮上しており、委託先のネットワーク管理不足が原因とされています。自治体自体でなく業務委託先を経由して被害が拡散するリスクを強く印象づけた例です。
2024年11月23日と25日に、熊本県が管理する農業関連サイトが大量アクセスによるサイバー攻撃を受け、一時的にダウンしました。その後、住民の氏名や住所など数千件の情報が流出した可能性が判明し、12月上旬には関係者に通知を行う事態に。システム構成や委託先セキュリティ対策の不備が原因とされ、被害拡大を防ぐ仕組みが整っていなかったことも問題視されました。
同年11月28日に、イベント企画運営会社のサーバーがランサムウェア攻撃を受け、イベント参加者の個人情報が暗号化・流出したと報告されました。複数の自治体からイベント運営を受託していたため、どこまで情報が影響を受けたのか特定しづらい面がありました。下請け企業がさらに外部と連携しているケースが多く、リスクを見落としがちになるという教訓を示しています。
参照元:朝日新聞公式HP (https://www.asahi.com/articles/ASSDB4HS8SDBUGTB00JM.html)
2024年3月1日に、テスト環境のサーバーへ不正アクセスがあり、大規模な個人情報が流出した可能性が取り沙汰されました。テスト用のサーバーであったにもかかわらず、本番と同じデータを使い、アクセス制限が甘かったことが致命的な要因です。運用開始前の環境でも油断できないことを痛感させる事例となりました。
2024年2月14日から15日にかけて、教育機関向けのメールサーバーが外部に乗っ取られ、大量の迷惑メール送信に利用されました。原因は、アカウント管理の不備や安易なパスワード設定だったと指摘されており、認証管理の徹底が不十分だとシステムの一部が踏み台化し、深刻な二次被害をもたらす恐れがあることが改めて浮き彫りとなっています。
OSやアプリケーションの更新は、脆弱性を塞ぐ第一歩です。アクセス権限を必要最小限に絞り、特に外部からのログインには多要素認証を組み合わせることで被害を低減できます。
古いソフトウェアや初期設定のままのツールを使い続けると、攻撃者にとって絶好の侵入口になります。ログを蓄積・監視しておけば、侵入を早期に察知しやすくなります。
システムやデータを扱う事業者と、セキュリティに関する具体的な契約事項を盛り込みましょう。脆弱性検査やパッチ適用時期、万が一の対応責任を契約書に明示すれば、トラブル時の混乱を抑止できます。
サイバー攻撃の多くは、職員が不審なメールを開いたり、脆弱なパスワードを使ったりすることで拡大します。定期的な研修だけでなく、模擬攻撃メール(フィッシング訓練)などを実施して危機意識を高めることが重要です。
外部の専門家により疑似ハッキングを行い、弱点を具体的に洗い出す方法です。システム上での実地検証ができるため、対策が効果的に行われるかどうかを早期に判断できます。総務省の方針に沿って、多くの自治体が採用する流れになると予想されています。
サイバー攻撃は「いずれ受けるかもしれない」ではなく、既に自治体の身近に起きている脅威です。攻撃者の手口は年々複雑になり、委託業者への侵入や、ちょっとした職員の操作ミスも取り返しのつかない被害につながります。 それゆえ、組織としての防御体制は「攻撃される前提」で設計し、脆弱性対策や人材育成を継続的に見直す必要があります。自治体の信用は住民の安心感と表裏一体です。
サイバーセキュリティの強化は、地域社会のインフラをしっかり支え、住民の信頼を守るための最重要課題と言えるでしょう。
ここではサイバー攻撃の標的として狙われやすい「製造業」「金融機関」「IoT」の3つの中から、それぞれのおすすめの理由とともにおすすめの企業を紹介します。